次世代への事業承継に頭を悩ませている経営者は非常に
多い。人の親であれば、まず頭をよぎるのがわが子への承
継 だろう。しかし、当の子に受け継ぐ意思がない。また、
後継者候補がいたとしても、経営者としての資質や能力が
不足しているため、引き継ぎがされていないようなケース
もある。
私がお客様と接して感じるのが、経営者と後継者との間の考え方にギャッ
プがありすぎるということ。経営者の「これまで培ってきた伝統を大切にし
たい」という思いと、後継者の「時代遅れで経営環境の変化に対応できてい
ない」という思いがぶつかり合って対立を生みだしている。
スムーズな世代交代ができているところは、まず、後継者が今までの伝統
を大切にしている。さらに、経営者も一歩下がって「見守って」いる。当然、
見守る覚悟をさせる決定打を放つのは後継者の役目である。
そのためには、後継者は経営者だけではなく、従業員や取引先など関係す
る人々をも巻き込み、後継者無しではもう会社は動かないと言わしめるくら
いの実力を示すことが必要になる。
しかし、実力を示すだけでは足りない。なぜなら経営者には長年経営者を
務めてきたというプライドがあるからだ。このプライドというのはやっかい
で、後継者が実力を示すほど経営者は存在感を示したくなる。
だから、後継者は経営者に自身の実力を示すだけではなく、長年経営者を
続けてきたことに対する敬意を示さなければ、スムーズな世代交代は望めな
いだろう。
経営者から「これからは全てあなたに任せたい」と言わせてみようではな
いか。その言葉には、「対立」の意味は含まれていないはずだ。
税理士 光廣 昌史
2014.7.14(月) 中国新聞 夕刊「でるた」(1面) 掲載記事より